パリ近郊の音楽院でヴィオラを学んできたザイアは、パリ市内の名門音楽院に最終学年で編入が認められ、指揮者になりたいという夢を持つ。だが、女性で指揮者を目指すのはとても困難な上、クラスには指揮者を目指すエリートのランベールがいる。超高級楽器を持つ名家の生徒たちに囲まれアウェーの中、ランベールの仲間たちには田舎者とやじられ、指揮の練習の授業では指揮台に立っても、真面目に演奏してもらえず、練習にならない。しかし、特別授業に来た世界的指揮者に気に入られ、指導を受けることができるようになり、道がわずかに拓き始める-。
本作は現在も精力的に活躍の場を広げているディヴェルティメント・オーケストラを立ち上げた一人の少女と仲間たちの物語。指揮者を目指すアルジェリア系のザイア・ジウアニが、パリの音楽院への編入をきっかけに、巨匠セルジュ・チェリビダッケに指導を受け、時に厳しく時に温かく対話を重ね、音楽を学ぶ。そして、貧富の格差なく誰もが楽しめるように、パリ市内の上流家庭出身の生徒たちと移民の多いパリ近郊の地元の友人をまとめ、垣根を超えたオーケストラを結成した。この実話を映画化したのは『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』の監督マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール。主要キャスト以外の配役は現役音楽家を抜擢。数々の美しい有名クラシック音楽が、実際に演奏しながら撮影され、ライブ感溢れ心躍る感動作が完成した。
本作の2023年フランス公開によって存在が注目されたザイア・ジウアニは2024年パリ・オリンピックの聖火ランナーを務め、さらに閉会式では大会初の女性指揮者としてザイア・ジウアニ指揮、ディヴェルティメント・オーケストラによるフランス国歌“ラ・マルセイエーズが”演奏された。
1998年にザイア・ジウアニがパリとセーヌ・サン・ドニの音楽院の学生や指導者と一緒に設立。現在も70人程の団員を有し、交響曲に加えてワールドミュージック、伝統音楽、ポピュラー音楽など幅広いレパートリーで年間約40のコンサートを開催している。
クラシックヒット楽曲でいっぱいの、エネルギーに満ちた映画
-Fotogramas
人種差別、性差別、階級の不平等に立ち向かう素晴らしい映画
-CinePhil
魔法のようにリアルでエモーショナルな感情の高まり
ーfilm-rezensionen
情熱的な若い音楽家の肖像
-kino-zeit
劇中楽曲
- ボレロ/ラヴェル
- 夢のあとに/フォーレ
- 七重奏曲 変ホ長調 作品20/ベートーヴェン
- アルルの女第2組曲 第4曲:
ファランドール/ビゼー
- 交響曲第9番「新世界より」ホ短調 作品95
/ドヴォルザーク
- 交響曲第7番 イ長調 作品92/ベートーヴェン
- 無伴奏チェロ組曲第1番
ト長調 BWV1007/バッハ
- 『ロメオとジュリエット』作品64
「騎士たちの踊り」/プロコフィエフ
- 交響曲第5番 変ロ長調 /シューベルト
- ピアノ・ソナタ第14番「月光」嬰ハ短調
作品27/ベートーヴェン
- ディベルティメント 変ロ長調 /ハイドン
- チェロ協奏曲第1番 イ短調 作品33
/サン=サーンス
- 『アルルの女』第1組曲第4曲
「鐘(カリヨン)」/ビゼー
- 交響詩「死の舞踏」作品40/サン=サーンス
- 交響曲第1番 ハ長調 作品21 /ベートーヴェン
- 『サムソンとデリラ』 作品47
「バッカナール」/サン=サーンス
- 『魔笛』「これはなんと素晴らしい響き」
/モーツァルト
- 交響曲第102番 変ロ長調/ハイドン
1963年フランス生まれ。ジャーナリズムを学び、ロサンゼルスのハリウッド・レポーターの編集長に就任。アメリカで12年間暮らした後フランスに帰国し、1996年に制作アシスタントとして映画業界でのキャリアをスタート。2003年にドキュメンタリー映画『Monsieur N, l'aventure du tournage』のプロデューサーを務め、2004年に制作会社VENDREDI FILMSを設立し、その後製作会社LOMA NASHA FILMAを設立した。2009年に脚本を書いた『La première étoile』は164万人を動員の大ヒットを記録し、セザール賞新人賞にノミネートされた。2012年に『Ma première fois』で監督デビュー。2014年の監督・脚本作『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』で世界各国の映画賞を受賞し、2016年の若い女性の徴兵を描いた監督・脚本作『ヘヴン・ウィル・ウェイト』でリュミエール賞脚本賞にノミネートされた。2020年にはコロナ禍で通常開催されなかったが『A Good Man』がカンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクションに選出された。また2005年に映画界の女性プロフェッショナルが集まる団体「フランス映画女性サークル」を設立し、現在会長を務める。
『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』(2014)
『ヘヴン・ウィル・ウェイト』(2016・第29回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門上映作品
『パリの家族たち』(2018)
1996年フランス生まれ。2010年にTV映画『Fracture』の出演でキャリアをスタートし、2016年のカンヌ国際映画祭カメラドールを受賞した主演作『ディヴァイン』で、自身もセザール賞とリュミエール賞の有望若手女優賞を受賞。アンドレ・テシネ監督、カトリーヌ・ドヌーブ主演の『見えない太陽』や、ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品の全編モノクロ作品『涙の塩』などに出演し、NetflixのTVシリーズ「ヴァンパイア・イン・パリ」では主演を務め、同じく主演作『タバコは咳の原因になる』は東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門で上映された。
『ディヴァイン』(2016)Netflix
『見えない太陽』(2019)
『涙の塩』(2020)
「ヴァンパイア・イン・パリ」(2020~)Netflixシリーズ
『タバコは咳の原因になる』(2022)
1995年フランス生まれ。2012年のTV映画『Parle tout bas, si c'est d'amour』の出演でキャリアをスタートし、2017年の『きみへの距離、1万キロ』では監視ロボットを通した運命の恋の相手役を演じ、NetflixのTVシリーズ「フューリー:闇の番人」では主演を務めている。
『きみへの距離、1万キロ』(2017)
「ファミリー・ビジネス:マリファナ・カフェへようこそ」(2019~) Netflixシリーズ
「フューリー:闇の番人」(2024~) Netflixシリーズ 主演
1949年フランス生まれ。1974年TVシリーズ「Messieurs les jurés」に1エピソード出演でキャリアをスタートし、同年にシャンタル・アケルマン監督の『私、あなた、彼、彼女』に出演。ジャック・オーディアール監督の『真夜中のピアニスト』、『潜水服は蝶の夢を見る』、再度ジャック・オーディアール監督作でカンヌ国際映画祭グランプリに輝いた『預言者』などキャリアを重ね、2014年に『Quai d'Orsay』でセザール賞助演男優賞を受賞。その後もアンジェリーナ・ジョリーが監督・主演し、ブラッド・ピットと共演した『白い帽子の女』、セザール賞で監督賞を含む5部門受賞の『天国でまた会おう』に出演している。
『私、あなた、彼、彼女』(1974)
『真夜中のピアニスト』(2005)
『潜水服は蝶の夢を見る』(2007)